赤木沢 |
【データ】
【メンバー】 |
昨年、沢上りにチャレジしたのは、いくつかの本で、甲武信岳の笛吹川と黒部川源流の赤木沢は、素晴らしいコースだが、引率の方が上級者であれば、初心者でも登れるということで、いつか行けたらなぁと思っていたときに、O夫妻(しんさんと紫さん)にめぐり会え、夢がかなったからであった。 7月に転勤し、またまた単身赴任となったたこともあって、山は、南木曽岳以来、ご無沙汰となってしまい、日本百名山も残り9座となったのに、今年は、一つも進んでいない。夏はどうしようかなぁと思っていたときに、ご夫妻が連れて行ってくださるという連絡をいただいた。 ご夫妻は、2回目ということだが、私の夢をかなえてあげたいというありがたい御誘いだった。当初の計画は、12日の夜に出発し、13日に折立から太郎平を越え、薬師沢小屋に下り、赤木沢を遡行後、黒部五郎岳経由、黒部五郎小屋泊、そこから五郎沢を下り、祖父沢を上り、雲の平に出るという計画であった。 2000年に雲の平から黒部五郎方面を眺め、「この間、歩けるのかなぁ。歩けたらいいのになぁ」と思っていたので、ご夫妻の提案にわくわくした。雲の平へのルートも、昔は地図に破線で記されていたルートだったようだ。 しかしながら、今年の天候は不順で、8月も14日になって、ようやく天候が安定する予報となり、ご夫妻の判断で、赤木沢だけになった。 それ以前に、昨年来の沢ということで、私の足慣らしに近畿の沢に行く予定だったが、それも天候が悪くアウトとなった。 13日に準備のために生駒の自宅から、早めに寮に帰ったが、思いのほか、準備に時間がかかり、和歌山市駅に21時集合がぎりぎりになった。 市駅でピックアップしていただき、和歌山ICに向かう。ご主人は、後部座席で睡眠体制。紫さんの運転で助手席で、よもやま話に花が咲く。お盆で車は多いが、止まる様な渋滞はない。 多賀SAまでは、いつもよりは時間がかかった。ここから尼御前SAまでは私、尼御前からは、Oさんが運転してくれた。尼御前からは、私も後部座席で睡眠する。エスティマは大きくて快適だ・有峰林道ゲートは三台目だった。 紫さんによると、折立の駐車場スペースがあるか心配だと。確かに言われてみると、お盆で人手が多いはずと思った。さすが紫さんだ。 後部座席のおかげで、いつもより睡眠がとれた。朝は、まだ、霧雨で心配の中、6時の開門とともに、30分ほどで折立の駐車場に着いた。やはり満車でわずかの隙間に置いた。後続の車は、道を戻り、路肩に止めるしかない。 ゆっくり準備し、霧雨の残る中、出発する。滑ってどろどろにならないよう、気をつけて登る。紫さんは登るのが遅いというが、沢道具で結構重く、久しぶりの登山の私にとっては、ベストのスピードだった。結構、たくさんの人が下りて来る。悪天続きで大変だったろう。 ![]() ![]() 三角点までは2ピッチで着いた。ここから先、どんどん晴れ出し、森林限界を超えると、薬師岳方面が美しく、歓声を上げたくなるほどだ。自然とカメラの回数が多くなり、また、あわてるスケジュールでもないので、ベンチベンチで休み、楽しみつつ登る。この辺りから小屋までの道は稜線歩きのようで気持ちがいい。タテヤマリンドウが多く目に付いた。 ![]() ![]() 立派なベンチや道標が多く、距離や標高が記されている。実際に歩いた時間は3時間半ほどだが、ゆっくり休みながらなので、ちょうど正午に太郎兵衛小屋に着いた。ここからはまさに大展望で、左に薬師岳、そして水晶岳、鷲羽や祖父岳、そして黒部五郎岳と久しぶりの北アルプスを代表する山々に感激する。中でも私は水晶岳が大好きだ。 ![]() ![]() 太郎平小屋は、水も豊富でトイレも新しい公衆トイレができ、申し分ない。サントリーのプレミアムモルツの生ビールまで売っているのには、驚かされた。明日の最大の楽しみとする。 ![]() ![]() ここから薬師沢小屋までの道は、はじめてだ。黒部五郎に向かう太郎山への分岐を左に取り、木道を下り気味に進む。薬師岳や水晶岳が素晴らしい。道を整備する多数の人が休憩していた。どんどん下ると、登って来る人も結構多い。 40分ぐらい下り、沢に出会うと、トリカブトが多かった。一息入れて、ときどき急な階段を登ったりするところもあるが、ほとんど標高差のなく、よく整備された木道の多い道をどんどん進む。薬師沢小屋との中間地点にあたる左俣の橋には渓流釣りの人もいた(右上の写真の沢に右手に写っている)。 ![]() ![]() 薬師岳の東南稜がよく見えるベンチで休む。どうしてもあの稜線をみると、愛知大学の大量遭難の話になる。どんどん進み、沢の音が聞こえ、下ると、ひょっこり薬師沢小屋に出た。よくこんな場所に建てたな思わせる小屋だ。 ![]() ![]() 小屋の入り口のビールを冷やす水は、痛いほど冷たい。混み具合は、ふとん2つに三人なので、まだ、有難い。我々は二段の上だった。早速、冷たい1リットルのビール(スーパードライ、1300円)を買い求め、テラスで一杯やる(隣の組は2リットルで負けた)。清流を見ながらのぎんぎんに冷えたビールは最高だ。 やはり渓流釣りのメッカのようで、釣り人も多い。上のテラスから下のテラスに集う人たち、黒部川をみる。心地よい風。自然に抱かれる感じだ。 下に見える釣り橋に紫さんが行ったので、後を追うが、なかなかスリリングな橋で、多少、酔っている私は、危険であったろうと思う。ここを渡って、雲の平に行けるようだ。まだ、向かう人もいる。 夕食はローストポークを中心に簡素なものだった。翌朝の朝食は弁当にしたが、ちまき3個とウーロン茶の紙パックだった。 4時には起床し、暗い中、外で準備する。5時になり、足元がはっきり見えるようになったので、小屋前のテラスからの梯子で沢に下りる。 ![]() ![]() ここから赤木沢の出合までは黒部川の本谷とのことだ。20分弱歩くと、中洲となっていて、右手を進む。40分ほど歩いたところで一息入れる。赤木沢出合までは、左岸を歩き、思ったより、高巻きもあった。結構、右岸を歩く人も多かった。一箇所、高巻きせず、先行者に着いて行くと胸まで浸かってのへつりをするはめになる。 先行者の女性は首まで使ってしまい、あわてて男性が背後から助けていた。水温は非常に低いので、女性は真っ青な顔であった。紫さんが振り返れば少しだけ巻くと行けたなあ。付いて行くのはやはり駄目だと言った。沢はテープがあるわけでないので、ルートファインディングが重要だ。赤木沢までも素人だけでは頼りない。 他のパーティがルートを悩んでいる間も、紫さんは自信を持ってぐんぐん進む。実に頼もしい。 黒部川本谷と、赤木沢の出合は左手には絵に描いたような綺麗な天然のダムのような小滝と淵だ(左上の写真)。釣り師三人や本谷に向かうカップル、たくさんの人が集まった。ここまでで5パーティーぐらいに出合った。紫さんは、いろいろ皆に明るく声をかけるので、楽しい話がきける。 赤木沢に入ってすぐ、水量が多くないので、巻かずにへつって行く(右上の写真)。すぐに2段20mの素晴らしい滝が現れる。「赤木沢」という名にふさわしい赤い感じのナメ滝が続く。左からウマ沢が入っていて、その後も美しい滝が続く。2+10+10+8mの四段の連滝は、先行者は右岸を進み過ぎ、再度下りて来た。我々はご夫妻の的確な判断で順調に進む。基本的に全て左岸を進むの ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 8時に連瀑の上で休憩すると、またすぐに連爆、そして斜瀑と飽きない。空には秋のようなうろこ雲。稜線が美しい。「綺麗やなぁ」「満足〜」の言葉の連続だ。連れて来ていただいたことに心から感謝する。もちろん、緊張感もあるのだが、「癒される」という言葉が、ぴったりだ。美しいとしか言いようのない沢、青空、まだ雪の残る稜線、心地よい風、そしと何より一緒にいるだけで楽しいご夫妻。これ以上の幸せな時間はないだろう。 ![]() ![]() ![]() ![]() 斜瀑下で休んで10分ほどで、ニッコウキスゲの咲く30m+5mの最後の大滝の前に着く(左下の写真)。滝は見事だが、どこを登るのだろうとびっくりした。 ![]() ![]() ここは、先行パーティが滝下、右の木が茂る崖を相当苦労して垂直に登って行ったが、紫さんの判断と記憶で、もっと楽そうな左の草付きのルンゼを登ることにする。しかし、踏み跡はあったが、見た目より逆層で草つきのどろどろの斜面だった。何人かが赤木沢は全て右手(左岸)を巻くという言葉が気になったが、お二人の経験を頼りに着いていく。 しかし、やはり相当あがったところで、撤退することになったが、私の実力では戻るのも危ない。さらにホールドするにも握力のいるところ、足場の悪いところではやばい。 「正直、これはやばいなぁ。上手く戻れるかなぁ、転落しておだぶつかなぁ」とかなりびびり心配したが、さすがしんさん、すばやくザイルをセットしてくれて、誘導してくれ、何とか戻ることができた(右上写真はザイルを撤収するしんさん、しんさんのいる先がこわかった。)。 ![]() ![]() 紫さんは、「ごめ〜ん!」と謝ることしきりだが、お二人の対応がさすがで、滝下でほっとした。紫さんも私の力では転落するのではと相当心配してくれたようだ。下流を見ると水晶岳がどーんと居座り、実に美しく、「よかったね」と慰められているようだった。 しかし、また、滝横の急な崖を登るのも危険だなぁと心配していたが、紫さんがしっかり、危険なときも、追いついてきた人が、先行パーティが登って行った崖でなく、少し戻ったニッコウキスゲの咲いている斜面を巻いているのを観察してくれていて、容易なルートを見つけてくれていた。(左上の写真) ![]() ![]() この高巻きは。急ではあるが、しっかりしたホールド箇所もあり、笹薮を抜けると、崖横のルートと合流して落ち口に飛び出た。もう終わりかなと思ったが、まだまだ美しい沢が続く。右からはいる枝沢を過ぎて、2237mの分岐で赤木岳に詰めるより、前回同様中俣乗越に出るのが一番楽だの紫さんの判断で左に真っ直ぐ取る。 右の支流を過ぎ大休止して昼食とする。最後にでてきた二股は、歩きやすそうな右をとった。この辺りから振り返ると美しい赤木平が見える。まだ水の流れがあった。この辺りから、ウサギギクが多かった。ガスがある綾線も近くに見えた。 ![]() ![]() 水もやっとなくなったと思うと、お花畑と池塘のある斜面で、適当に登ると、少しのハイマツ帯があり、縦走路だった。水が切れてわずか10分ほどだった。本谷の源流ではないが黒部川にそそぐ最初の一滴を見たときの感動は大きかった。そして見事に目的の中俣乗越に出たのだった。2001年に黒部五郎岳への道から見たのは、赤木岳―のルートを取った人たちだったので、今回の詰めのルートとは違ったようだ。 稜線で休憩していたパーティはびっくりしていた。頼んで記念写真を撮ってもらった。沢装備をとき、ここからは、太郎兵衛小屋に向かう。稜線から見下ろす赤木沢と赤木平、は気持ち良いが、ばてばてだった。 途中、沢で一緒だった男女組と親しく歓談する。北ノ俣岳からようやく楽になったが、太郎平小屋までの縦走路は疲れてばてばてだった。しかし、話や高山植物に慰められ、そして何より生ビールを楽しみに15時半に到着した。 ![]() ![]() ![]() ![]() 紫さんが昨日に入れた予約が功を奏したのか、有峰という個室となり、ゆっくりできラッキーだった。そして待望のサントリープレミアムモルツの生で乾杯した。実に美味しかった。緊張感から開放され、この時間も大きな山の楽しみの一つだ。持参したウイスキーまで飲んだのが悪かったのか、しんさんは酔ってしまったようで、夕食の時まっ青になったしんさんは一口も食べずに寝てしまった。そしてタッパーに夕食を綺麗に詰めて取り除いたのがよかったようで、少し眠って起き上がったしんさんはぺろりと食べたので安心した。そうそう、行きの準備に時間がかかったのは買い物にもあったが、衝動買いした、花王ビオレの汗取りはなかなか効果があった。こんなもの、男が山に持っていくのは邪道だが(^^ゞ ![]() ![]() 夜、雨音がしていたが、朝は快晴だった。朝食は夕食よりよかった。小屋の主の五十嶋さんと記念撮影したり、名物のラジオ体操をしたりする。しんさんは、テント場までの道 ![]() ![]() 折立への下りは、梅雨に濡れたチングルマの種子や美しく、剣岳や有峰湖も見えた上、赤木沢で一緒だった愛知のペアと話も弾み、楽しかった。 温泉は前回と同じ、亀谷温泉白樺ハイツに行く。林道ゲートからすぐで便利な分、登山者等でいっぱいだったが、広かったので問題なかった。やはり山行後の温泉は最高だ。 今回は、ここらかも紫さんのアイデアで楽しみがあった。紫さんのマイミクの勧めで、昼食は何としても高級回転寿司の「氷見きときと寿司」ということで、ナビで探し、向かう。富山ICの近くの店は30分待ち。県外の人が多い。 ご夫妻お薦めの「のどぐろ」は大トロ並みの値段だったが、これは、正直、塩焼きの方がよいようだ。でも、他の魚も美味く、大満足だった。 北陸道も1000円とお盆や事故で混雑していたが、そのせいで、甘いものが美味しいと紫さんが言う賤ケ岳SAに。私はお薦めに素直に従う方なので、紫さんお薦めの琵琶湖ホテルの「茶畑」というアイスと小豆を中心としたデザートを頼むる期待以上で大満足。夕食も前回紫さんに薦めていただいた、大津SAの近鉄レストランで、ビーフシチューでしめくくる。食事に大満足で、こうなると、何をしに行ってきたのか記憶があいまいになる(^^ゞ 全て、ご夫妻のおかげと感謝感謝の山行であった。また、ご一緒させていただける日が遠くないように。 |