会社のN所長と中学校時代から山岳部に在籍されていた取引先のH副社長から、お誘いを受け、四阿山と高妻山を目指すことになる。今回は、山登りより、Hさんのお薦めの戸隠の越水ガ原にある「山の庭タンネ」に宿泊することが主目的である。
エリアマップに載っているだけでなく、朝日新聞の日本百名山シリーズにも掲載されるなど、その道では、有名な小屋であるようだ。小屋の雰囲気と共に、食事がすばらしいとのことだ。
金曜日に西宮であった、兵庫労働安全衛生大会での養老孟司氏の講演に満足した後、あわてて、寮に帰り、出発準備をする。昼間は夏そのものの天気が俄に曇り、雷雨となった。18時半の出発は大雨の中である。Hさんの車progresは、シートもよくて、快適であるが、あまりの雨で高速は運転しにくそうだ。
京滋バイパスから、名神に合流する頃には、雨も止んだので、多賀SAで夕食とする。SAのレストランも進化して、費用対効果は大きかった。私は、店長お薦めと書かれたカツ鍋定食980円を食べる。

ここからは、私が運転して、駒ヶ岳SAまで走る。順調で2時間ほどであった。休憩後、Hさんの運転で姥捨SAまで走り、仮眠となる。ここは車は少なかったが、結構暑くて、2時間ほどで起き、外 で体を冷やす。後で知るが、珍しく鼾をかき、皆に迷惑をかけたようだ。
Hさんの「寝過ごした」という声で、4時30分に起きる。長野東ICまではすぐで、コンビニがあるか心配したが、すぐにセブンイレブンがあり、品物も届いたばかりで目的のものが買えた。そのすぐ先にローソンもあり、本当に便利になったものだ。

菅平牧場までは、カーブは多いが快適な道で1時間もかからなかった。途中、サルビアとあさがおが植えられ美しい景観が続く。道も、さすが有名な観光地である。
菅平牧場も駐車場が何箇所かに分かれているが、登山口に最も近く、牧場事務所とトイレ棟のある第一駐車場に止めれた。既に10台近く止まっていた。牧場には乳牛が何頭も草を食べていた。それにしても広々とした景色で、いいところだ。標高はすでに1500mもあり、実に涼しい。
ここで、朝食(私はいつものように、ハムレタスサンドイッチと野菜ジュース)とトイレを済ませ、出発する。秋の気配が濃厚な空気の中、牧場柵横の道を登る。傾斜は急だが、振り返ると雄大な景色が広がり、気持ちがいい。特にうれしかったのは、思ったより花が多く、秋の花が盛りであった。マツムシソウとリンドウは本当に多かったが、アザミやキリンソウも目立った。
しかし笹には、昨日の水滴がつき、ズボンを濡らす。私のズボンは速乾性だが、撥水性はないので、やはり濡れる。
休憩後、背丈ほどの笹の中を一上りすると、白樺林となる。大きな「クロマメノキ(ジブドウ)採取禁止の標識があった。
山頂近くになると、低い笹の高原となり、リンドウがたくさん咲く中、トリカブトもあった。逆光がかえって笹を美しく輝かせ、ガスはあるが、本当に歩きやすい。山頂には、一等三角点があるものだと思っていたが、ここにはなかった。
じっとしていると、結構寒く、ガスで展望もないし、汗をかかれたNさんが風邪をひかれてはと思い早々にたつ。
すぐに右側がすぱっと切れ落ちたガレキ帯を下ると、再び歩きやすい笹原となり、快適に歩く。ガスも晴れ始め、鞍部近くになると、目指す四阿山の頂がガスの中にも見え隠れし始めたので、少し時間をとる。ここは、コース中最高の景観であろう。
鞍部は、一際、リンドウが咲いていた。ここからの上りは、うっとうしい背丈ほどの笹の切り分けを上ると、少しでしらびその道となる。この辺りだけは、南アルプスの雰囲気だ。
中四阿山が見える箇所で休憩後、一上りすると、中四阿山方面との分岐で、コケモモが多かった。いくつかとって口に含む。やはりすっぱい。

ここから山頂までの700mは、少しの上りも、木道となり、歩きやすい。この木道の階段は、微妙に逆向きに傾斜をつけ、滑らない方に工夫されている点、山のベテランHさんも感心されていた。
山頂には、祠が二つあったが、どちらも古かった。ガスも時折晴れ、太陽もあったので、ビールが美味かった。炊き込みご飯の弁当と稲荷寿司を肴に楽しい一時を過ごす。次から次へと登って来て下るときには20人ほどになっていた。
中四阿山方面への下りは、少しで笹原の中にリンドウが咲き乱れていた。さらに下るとダケカンバの純林となり、中四阿山方面からは、ヤッホーという声が盛んに聞こえた。中四阿からの根子岳の展望は抜群でちょうど晴れてくれたので、マツムシソウに映えた。やまぼうし自然学校の団体で、若い女性の先生が、いろいろやらさないと歩いてくれないと笑っていた。
林道を横切り、少しで芝も生える小さな草原にマツムシソウが盛んに咲いていた。ただ、牧場まで1.2kmの表示は首を傾げたくなる長さで、出会った沢の水の冷たさに救われた。そこからゆるやかにわずかに上ると、牧場横に出て、少し下ると、舗装道に出た。

駐車場近くに牛乳とアイスクリームが売っていたので、牛乳を飲む。300円だが、量と味は値段にふさわしく感動する。
帰りにきっちり、道で止められ、一人200円の入山料をとられた。
善光寺の仁王門前で蕎麦を食べ(蕎麦の中心部を使っているので、利賀村で食べた蕎麦に近かった)、藤屋旅館地下の喫茶でコーヒーを飲む。ここは、Hさんの先輩のご夫妻の店で、趣があった。
ここからバードラインを通り、戸隠に向かう。雪よけのシェルターが延々と続く道であった。明日、上る高妻山の登山口を確認するため、戸隠キャンプ場に向かう。大変なテントの数で、夏休みも済んだのに驚きであった。
タンネは期待通り、風情のある小屋で、テレビもない静かな環境は、落ち着く。薪ストーブ、山の名著が並ぶ本棚、囲炉裏、独特の空気が漂う。酸味のきいたコーヒーもたまらなくおいしい。

入浴後、明日のことを考えていると、激しい雷雨となり、午前3時半まで降り続いた。テントの人たちは大変であったろう。夕食時、明日の降水確率の高さを聞き、高妻山はあきらめる。
夕食は聞いていた通りおいしく、前菜、魚・肉料理ともに絶品であった。また、若いアルバイトの男性の「雨も落ち着きます」という言葉通りの夜となった。
遅れて到着された単独行の方は、60歳を超えてから、百名山を目指されていて、70歳を超えるのに、単独で加古川から車で走り、巻機山を登り、明日は高妻山だという。

何と数年前の台風時、幌尻山荘からヘリで救出された毎日旅行の一行にもいたという。ツアー登山は高いので、今回のように残りは単独でという。もう、百名山も80を超え、明日固執して無理されなければいいがと心配したが、翌朝あきらめられていたのにほっとする。
翌朝の和食の朝食も美味く、午前中に奥社と鏡池を散策する。奥社への道は広く、杉の巨木は歴史を感じさせた。最後はやはり、戸隠山の登山口だけあって、少し上る。
帰路、雨が激しくなったが、鏡池に向かう。森林植物園を過ぎた辺りで激しい雨となったが、ちょうと東屋があり、助かる。前を戸隠登山をあきらめたと思われる若い大勢の団体が通り過ぎる。
鏡池へは、木道でなくなるので行くのが躊躇されるほどの雨であったが、時間がかからないとのことで行くと、実に神秘的な景色が広がり、満足する。おそらく、紅葉時は、剣岳の仙人池にも負けない景色となろう。

最後は、H氏お勧めの戸隠中社前の「うずら家」という蕎麦屋に行く。開店と同時に満員という賑わいで、まだ昼には早い時間だつたが、30分近く待った。おそらく、周りに何軒もある蕎麦屋とさほどは違わないであろうが。
しかし、本わさびと食べる蕎麦は、確かに美味かった。すべてに満足し、帰路につく。帰りはループラインから長野東ICに向かう。途中、激しい雨の箇所もあったが、渋滞もなく尼崎に着けた。
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