果無山脈 安堵山・黒尾山・冷水(ひやみず)山 1184、1235、1262b |
【データ】
【駐車場】 |
果無(はてなし)という何とも言えない風情を感じる名前を知りとその姿を見たのは、今から5・6年前の年末熊野古道の中辺路から熊野大社まで歩いたときであった。黒潮(和歌山)国体のときに登山競技に使われたことや「花の百名山」で有名な作家の田中澄江さんがその名にあこがれ、縦走されたことを聞き、是非とも早いうちにという思いであった。山と渓谷社から出ている「和歌山県の山」や国土地理院発行の地形図でみると最も安直なのは、安堵山と冷水山鞍部の林道に車を置き、ピストンをするもので、同行のAさんも山行きは久しぶりということと、今回は雰囲気を味わえればと言う思いで、そのルートにする。案内によると縦走するにはテント泊1泊2日で、特に冷水山から十津川温泉へのルートはブッシュで分かりにくいようだ。和歌山から龍神への最短コースを通り、加財から林道に入る。ここまでは一部道が狭いところもあるが、何しろ信号がないので早い。加財からの林道も舗装され、特に龍神本宮広域林道は立派なもので、公共投資のあり方に疑問を持つほどであった。 果無山脈については、山びとの記 木の国果無山脈(宇江敏勝著、中公新書)を読んで益々好きになった。この本は、炭焼きと造林業に携わった著者のドキュメンターリーだが、抑えた雰囲気が過去の読書で経験したことのないような読みごこちの良さを与えてくれた。そこでは、果無の意味は、「果てしない」という意味ではなく、伝説すなわち「昔、この山には、いっぽんだちたたらという怪物が棲んでいた。一つ目・一本足のその怪物は、ハテ(12月)の20日になると出没して、峠を越える旅人を襲って喰った。だからその日に限って、人の往来もなし(なかった)というわけである」とのことだ。もう一つ参考になったのは、かねてから稜線付近は自然林が残っている山が多いということへの回答だった。山全体を植林とすると、痩地化するおそれがあり、また尾根などはもともと土壌も浅くて、植林をしても経済効率か゜悪いとされているからだそうだ。また、自然のバランスを崩すおそれもあるからだとのことだ。しかし、この本は、そんな講釈よりドキュメント部分が良いのだ。 |