日本アルプスでまだ、立ち入れていない地域は、南アルプスの荒川岳より以南。南アルプスは、昨年塩見岳に登り、山頂からの展望のすばらしさに更に思いは強くなった。南アルプスとは相性がよくこれまで甲斐駒、仙丈、鳳凰、北岳、間ノ岳、塩見どれも天候に恵まれ、すばらしい思い出となっている。荒川・赤石もあこがれの山だが、お花畑がすばらしいので、是非ともその時期にと思う。荒川・赤石は、どうしても静岡側からとなり、東海フォレストのリムジンバスの世話になる必要があり、時間・費用がかかる山域だ。
そんなわけで今回は、易老渡から入れる光岳・聖岳の周回コースを考えたが、今夏の朝日岳でテント山行は、荷物の重さでばてたので、Iさんが楽に行こうというので、アドバイスに従い、聖平をベースとして、空身で聖岳と上河内岳をピストンすることにする。
もう一つやっかいなのは、出発の日、Iさんと私は大阪で飲み会があること。MさんとM君に大阪でピックアップしてもらう。また、運転を任せることになり申し訳なかった。
秋雨の季節であり、数日前までの予報はよかったが、直前になると金曜日は悪いが、土・日は晴れるという。土曜日出発の短縮にするか少し悩んだが、Iさんと相談し、出発することにする。
金曜日の夜、野田で飲み会があり、20時30分過ぎに終了したので、Iさんとともに駅前の栄湯という銭湯で汗を流し、タクシーで待ち合わせ場所のコンビ二に向かう。今の銭湯は本当にきれいだ。ちなみに料金は360円+洗髪料10円だ。いまだに洗髪料を別にとるのがおもしろい。
荷物の積み替え等で出発が遅くなったようで、30分ほどIさんとコンビ二前のベンチで世間話をして過ごすが、雨が降ってくる。22時無事MさんとM君が到着し、コンビ二で買出しをし、出発する。福島から阪神高速豊中から名神に乗る予定であったが、福島を過ぎてしまい、堂島から阪神高速松原、西名阪を走る。香芝ICでスーツから山の出で立ちに着替える。これで気分も転換である。いつもの名古屋のセルフでガソリンを入れ、飯田ICに向かう。飯田からの道は迷うのではと懸念したが、ポイントには「三遠南信自動車道」途中から「矢筈トンネル」の表示があり、迷うことはないが、トンネルまでの道は狭い。R153から永代橋駐車場で県道18弁天橋東で東で左折、小川で右折し県道251を進むと、突如すばらしいトンネルが現れるという感じである。トンネルは有料だと思ったがそうではなかった。小泉改革でこの先延伸することは難しい道路であろう。
手前に休憩所があるとの記憶があったがなく、4.6kmのトンネルを抜け、R152を少し下ると左側にトイレのある小パーキングがあったので、仮眠をとる。白ずんだ頃、Iさんが真っ先に起き出し、車を走らせる。上村中小学校を過ぎ、少し走るとトンネル手前に、そう大きくはないが右手に「南アルプス聖岳・光岳登山口 易老渡」の青に白地の看板があった。右折しすぐに左に巻くようにR152を越し、林道に入る。ここからは日本のチロル、急斜面にへばりつくような集落とあり、夜間通行は危険との案内がい くつかのHP等にあったので、仮眠したのだ。情報通り、すごい道で、特に小野集落辺りであろうか、しらびそ高原への道に間違って入り(民宿の表示に南アルプス登山口の表示があったので)、そばの花とたわわに実った栗を見て、日本のチロルの秋を感じた。また人家に近いところで子鹿を見た。
一度谷に下り、ダートの道を走ると、易老渡に出た。10台以上止まり、出発準備をしている登山者がたくさんいた。10分ほど更に走ると、便ケ島で、50台はゆうに止まれる駐車場に10台以上止まっていた。聖光小屋を建設中で、バーベキューハウスができ、トイレも間もなく完成、小屋は基礎のみというところであった。現時点ではトイレは古い落とし込み一つである。
雨模様と眠気で気が重いが、出発準備をする。食欲がないので、ウインダーインゼリーのみを口に入れる。登山届を提出し、登山道に入り、急登を進むと、森林鉄道跡の道に出て、すぐにトンネルだ。ここからは平坦な道で、美しい自然林の中を歩く。フジアザミがたくさん咲いていた。でも下品な感じの花で皆も好きではないという。2箇所の小さな滝は、トレッキングルートとするためか大変立派な木の橋が架けられている。1時間ばかりかかると地図には記されていたが、40分ほどで着いた。西沢渡の沢は増水していて、ネット情報に従い、荷物用の野猿で渡る。真ん中までは自然に行くが、そこからは人の助けを借りないと難しい。一人の場合は避けた方がよいかもしれない(左の写真はM君が渡るところ)。
皆が渡り切ると、雨が本格的に降り出す。今日はだめのようだ。本格的な上りに入り、標高差100mを上ると、壊れかけた営林署の大きな小屋があった。小屋の横を通り、裏手に回ると、再び急登が続く。前を行くIさんとM君が立ち止まる。何とビールが破裂したようだという。確かに500ml8本のうちのスーパードライ1本に小さな穴があいている。何かとがったものに触れたのであろうか。M君は残りを飲み干す。ここからは黙々と上るしかない。30分に一本たてるという感じで雨の中、苦難の道のりだ。小雨で樹林帯なので、上は半そでTシャツ一枚だ。それ だけに5分も休むと寒くなってくる。途中の印象は、「1450m付近から1500m辺りのロープ箇所は気をつかうこと、倒木は多く(帰りに数えると腰を相当かがめたり、またぐのに苦労するのだけで10本=十本=倒木(^_^;))、特に腰を落とすのには疲れる。コースは樹林帯で単調と言えば単調だが、2000m辺りの原生林は本当に苔むして美しい」というところか。原生林に抱かれての登山は本当に南アルプスらしい。昼食はファミリーマートで買った、稲荷と巻きとバッテラとますずしのセット。これが美味かった。2000m辺りで少し平坦となり一息ついた。
薊畑に近づくとトリカブ トが多くなってきた(右の写真)。ようやくたどり着いた薊畑は、夏ならお花畑。ガスで辺りは何も見えない。ここからは聖岳は2kmで2H10分、西沢渡は3kmで3H、聖平は0.6kmで20分との表示があった。トリカブトの咲く道を下ると、すぐに南アルプス高山植物保護ネットワークが金網で囲い、かつてニッコウキスゲがたくさん咲いていたが鹿の食害に会い、なくなってしまったのが復元するか実験中と書かれていた。マツムシソウ等が名残を惜しんで咲いていた。
主稜線と聖平との分岐からは小屋まで10分と書かれていたが、木道を3分で着く。明らかに誤りだ。聖平は伊勢湾台風で樹林帯が今の姿に変わってしまったとのことだ。14時に新しい小屋の前に着くが、すでに閉まっている。真下の旧小屋(左の写真)を覗くと2階はまだ、誰もいないという。ラッキーとばかりにこの天気なので、テントをやめ切り替える。土間をはさみ左右にござを敷いた板間だ。入口付近と奥に2階に上る階段がある。テント場も10ぐらい張ってある。ただし、水は涸れ、椹島の方向に15分ほど下った涸れ沢に数メートル伏流水が湧き出ているところがあるらしい。しかし明確な表示はなく、 M君も教えてもらって分かったという事だ。トイレは少し離れたところで、新しいものは閉鎖で古いトイレを使う。戸数は多い。
先ずは、昼食用に買ってあったざるそばを食べる。そして水を汲みに行ってくれたM君が戻り、皆小屋の中で調理しているので気にせず、うるめいわしを焼き、ビールで乾杯。気温は低いので、冷やしていなくても美味い。その後、かつぎあげた焼酎(博多の華三年貯蔵)を飲む。そして15時半頃から、メインの鍋。妻が用意してくれた関西風うどんだしに豚・肉、はくさい、しろねぎ、しいたけ、まいたけ、とうふ、もやし、ちくわ、うどんを入れた寄せ鍋。例によってIさんが手際よく作ってくださり美味い。たらふく食って、17時には就寝。
ラジオが殊の外よく入ったので、相撲と天気予報を聞く。南海上に秋雨前線が横たわり、明日もダメ。東京はなんと最高気温が20度とのこと。こちらも寒いはずだ。上河内はやめ、聖岳だけ登り、下ることとする。夜半前にはかなりの風雨。小屋でよかったと感謝する。また、あまり混んでいなかったのが助かる。厚手のフリースとズ ボン下もはいているが、少し寒かった。Mさんはフリースを着ずとも暑かったというから、シュラフの差は大きい。何回か起きたが、19時以降静かでいびきの人もいず、静かだった。この時期来る人は山慣れた人が多いのかな。
その分、3時頃から活動しだす人は多い。我々は4時起床。朝食は、かにぞうすい。グリコのかにぞうすいの素にタマゴスープの素を加える。これも美味かった。M君が水汲みに行ってくれたりして時間がかかる。我々の出発時刻には誰もいなかった。しかし夜の風雨がしのげ、更に作業性がよく本当に助かった。南アルプスの冬季小屋はどこもいいと何人かが話していた。隣の夫妻(カップル?)は、奈良の人で畑薙ダムから来て百間洞の方に行くという。健脚で山慣れていそうだった。
ガスはあるが、雨はなく助かる。薊畑まで快調に登れた。ここで荷物をデポし、空身で登る。小聖岳手前は美しいダケカンバの森(右上の写真)で少しガスも晴れ、よかった。ほどなく、早くも下りてきた小屋でいっしょだった単独の人に出会う。写真を撮ってもらう人がくるまで山頂ですごい風の中、30分もいたという。森林限界を超えると風が強烈であった。その分、山頂は見えないが、聖への道がある程度見えた(左上の写真)。小聖岳で小休止と記念写真を撮る。慎重に両側が切れ落ちた尾根道を進む。トウヤクリンドウが咲き残り、チシマギキョウやイワツメクサに慰められる。いよいよ最後の大斜面。地図ではスリップ注意と書かれていたが、歩きやすかった。
しかし風が強く持ち上げられる感じだ。空身に近いのに苦し い。高度の関係だろうか。好物のクリームパンを食べ、元気をつける。思ったより早く山頂に着く。ガスで何も見えないが、3000m峰に立てた満足感はある。写真を撮った後、ウイスキーを飲む。IさんとM君は結構本格的にやっている。山頂下で雷鳥に出会えてよかったが、余りに寒いので早々に引き上げる。下りは快調で1時間で薊畑に着いた。途中単独行の外国人に追い抜かれる。朝百間洞を出たとしたら大変な速さだ。半そで半ズボン荷物もコンパクトだ。
薊畑で昼食としてワンタンメンをつくることに。ビールで乾杯もし満足である。西沢渡までの下りは長い。原生林の世代交代を観察したり、倒木の数を数えたりして楽しむが、長く感じる。2000m頃から沢の音が聞こえ、1500mでは、沢が見えたが、それでも遠い。ようやくたどり着いた沢を野猿で渡り、そこからの森林鉄道跡の道では、岐阜のご夫妻からおとついの上りで、熊やカモシカを見かけた話、百名山を目指していて80座以上登っている話等お聞きし、短く感じられた。
便ケ島の駐車場は20台程度だったが、易老渡は、50台もあり、路肩にも止めていた。日本のチロル地方の景色を楽しんだ後、かぐらの湯に行く。近代的で風呂の種類も多くすばらしい施設であった。また洗い場も多く快適であった。源泉温度も高く、飲用も入り口でできる。道の途中、池口岳登山口の表示もあった。
三連休で混んでいて小牧JCTから8km渋滞で恵那峡SAも混んでいたが、ここで夕食とする。日替わり前に自宅にたどり着け来週もいそがしいので上河内岳には行けなかったが、これはこれでよかったかもしれない。
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