今年末で切れるマイルが結構あるのに加え、通常より2割少ないマイルで特典航空券に換えられるキャンペーン中であることから、それを利用しての登山を思い立った。北は季節的に苦しくなったので、鹿児島の開聞岳と霧島山を目指すこととする。今年は遠征が多く、妻にも申し訳ないので、せめてミニマム費用となるような計画を立てる。レンタカーは軽自動車、宿泊先も車中泊を考えたが、前週の中頃から右足のつけ根が痛むので、姿勢が制約される車中泊はよくないと考え避けた。リーズナブルな宿舎を探す。ダメ元で「えびの市営露天風呂」の簡易宿舎(1750円/室、寝具代850円)に電話したところ、運良く空いていた。係りの人からは、夜は4度ぐらいしかないので、防寒対策をと言われた。予報も木枯らし1号が吹くとのことで心配だ。
25日の朝は、先日の福島と同様、始発の加太線に乗り、難波からの空港バスも道路が前回より空いていて伊丹空港にはわず か20分で着いた。今回はANAである。鹿児島行きの始発は満席である。向かい風が強いということで飛行機は遅れ、鹿児島空港には15分遅着した。空港のロビーからは、目指す韓国から高千穂の峯峰が眼前に聳え心が弾む。美しい稜線だ。
レンタカーの手続きは、総合案内所で問うと電話してくれ、空港前の指定駐車場に迎えに来てくれるとのことだった。千歳空港と違い、空港前にあるのだが、荷物の多さ を考えてのことであろう。車種はススギのワゴンRで、シフトレバーやサイドブレーキの位置が違うので注意を要する。カーナビは使い方を教えてくれるが、係りの人も熟知していないようだったが、レンタカー慣れしてきた私は、今回はすぐにマスターできた。
係の人の設定と言葉も間違っていて、空港を一周してしまったが、順調にルートをたどりだしたと思われたので、ローソンで弁当とガスを仕入れる。ガスカートリッジをイワタニのものにしたので、安価な縦長型の汎用品が使え、飛行機利用の場合便利だ。それでもコンビニで買うと一本200円ぐらいするが。
鹿児島空港から霧島山の登山口のえびの高原までは距離は30kmほどで、信号も少なく1時間もかからない。問題はコースで、理想は、韓国岳から高千穂峰までの縦走だが、その時間はない。開聞岳を先にして、霧島を翌日にすれば可能かもしれないが、特に霧島を先にしたのは、どうしても「知覧特攻平和会館」を見学したいからであった。韓国岳の往復で終わるか、新燃岳までは行くか、高千穂河原まで行くかは、韓国岳まで行った時間と痛めている右足の調子で決めることとする。
えびの高原への道は、茶畑の中を林田温泉に向かう。途中公共トイレもある整備された観光道路だ。林田温泉からはカーブが多く、有毒の噴気もあり要注意だ。しかしあちこちから上がる噴気は、いかにも霧島という感じで良い。高千穂河原への道を分け、登山の人の車で溢れる大浪池登山口を過ぎ、一走りでえびの高原であった。駐車場の空きが気になっていたが、さほどではなかった(410円/台なので、もう少し宮崎側に走った不動池寄りの路肩に止めている車が多かった。その方が韓国岳ピストン の場合、時間短縮となる。)
この駐車場には足湯があり、楽しんでいる人が多い。トイレを済ませ、韓国岳と硫黄岳を写真に撮る。登山口は道路を渡った側にあり、道標も大きい。すぐに溶岩帯を前景とした韓国岳があらわれ、絶好の写真スポットだ。硫黄岳への遊歩道のような道を進むと、たくさんのハイカーだ。ふだん山にあまり登ってはいないと思われるような方や小学生の団体も多い。
大地獄は硫黄の黄色がかった岩があるが噴気はない。合目表示もあるので、つらい木段もさほど苦にはならない(崩壊している箇所も多い)。登るにつれ、振り返ると不動池や白紫池が見えた。紅葉はさほどではない。少し早いのか、この辺は常緑樹が多くこんなものなのか(ハイカーの話では、来週が見頃とのことだが)。五合目を過ぎると、紅葉の低木と共に大浪池の青みがかった深い緑とその奥に桜島が見えた(右上の写真)。すばらしい景色だ。
六合目を過ぎると木道はなくなり、溶岩帯となる。あざみの花がたくさん咲いていた。七合目からは合目表示がなくなり、左手に柵で囲まれた思いもよらない大火口を見ると、山頂はすぐであった。大変な人であるが、高千穂峰までの稜線のすばらしさは過去ベスト3には入ると言え るすばらしさであった。一等三角点で写真を撮り、これからどうするかを考える。足は大丈夫、時間も大丈夫、問題は高千穂河原からえびの高原への 交通だけだ。この恵まれた天気を逃す手はない。食欲もないので、コンビニ弁当を半分だけ食べ、縦走路に向かう。
下りは木段が崩壊し、歩きにくく、下ってからも、道が掘れ込み、潅木帯の中の脇を木に掴みながら進む感じで、時間が思いのほかかかりそうだと一瞬心配になる。足も少し痛み出したと不安感が増した頃、歩きやすい道となり、団体にも出会い、ほっとする。途中、水が涸れた琵琶池の横を通る。また、ここかしこにリンドウが咲き慰められる。紅葉はまだ早いようだ。
獅子戸岳の上りでは、近畿日本ツーリストの団体が休憩していた。少し離れて歩いていた方に聞くと、昨夜大阪南港を出発し、縦走して、今夕のフェリーで帰るプランで、昼食弁当付で1万円以下という。いっしょに来ている名鉄観光はさらに安いとのことだ。ガイドも付き、採算が取れるのか不思議だが、縦走した場合の下山後の交通等考えると、極めてコストパフォーマンスの高いツアーだ。ただ、この人もツアーははじめてだそうで、ペースが合わないとこぼしていたが、この値段とこの天気で文句を言おうものなら、ばちが当たろう。鹿の鳴き声がした。早速ガイドの人が1200匹もいて、季節を限って大きな雄鹿から獲っていると解説している。
この上りからの韓国岳の姿もいいので、写真に撮る。獅子戸岳からも少し下り、潅木帯の中を新燃岳に登り返す。小さい子供を連れた家族連れが疲れを見せていたので、励ます。火口縁の1/3ほどを南東に歩きたどり着いた新燃岳の火口湖の色の美しさは格別で、エメラルドグリーンは美しく、皆歓声を上げていた。少し歩き道標のある南の最高点からの湖と韓国岳は本当に絵になる(左上の写真)。また、逆の中岳にかけてのすすき原と高千穂の姿も例えようがない。天気に恵まれたときの霧島は縦走しない手はないという印象をもった。
ここからは、一面のすすきの原の中を整備された木段と木道が続く快適な道である(右上の写真)。湯之野への道(4.5k m、中岳0.5km・韓国岳8.2km)を分け、軽く登ると、中岳山頂で、高千穂峰が圧倒的迫力で迫る。御鉢を抱えた独特の姿で印象に残る山だ。展望図があり、桜島の左に開聞岳が見えるとのことであった。
中岳からの下りは遊歩道と思っていたら、下までは、崩壊した歩きにくい道で、慎重に下る。高千穂の姿を見納め(右の写真)、下りきると遊歩道でベンチもここかしこにあり、ピクニックをしている家族も多い。高千穂河原からここまでのピクニックでも十分楽しめそうだ。特にミヤマキリシマが咲く季節はすばらしいであろう。中岳からの下りでは、ピンクの花があちこちに咲いているので何かなと思っていたら、「ヤマラッキョウ」と案内板に書いていた。また、ミヤマキリシマの狂い咲きもあり(左の写真)、見送られるようでうれしかった。ベンチの辺りではこの季節にきりぎりすが鳴いていたのは驚きであった。
下り着いた高千穂河原は、大規模な有料駐車場やビジターセンターのある「えびの高原」に似た登山基地だ。大型バスも多い。駐車場の管理の人にタクシーのことを聞くと、呼ばなくても、えびの高原との間を何台かピストンしているという。バス停がタクシー乗り場でもあった。乗り合わせてくださる人がないかと待っていると、先の人は4人パーティーでだめだったが、後に3人家族が来てごいっしょできたので、1/2で済んだ(高千穂河原−えびの高原は3790円、タクシーは20分待った)。ここで待っている間、驚いたのは高千穂峰への登山ルートだ。点に見えるのは人で、あんなところを本当に登るの?という感じであった。

えびの高原へタクシーで戻る途中、有名な水汲み場があって、たくさんのポリタンクを持った人がいた。今夜の宿泊先のえびの高原市営露天風呂は、宮崎側に数km進んだ右手にあった。途中、2匹の鹿が道路沿いにいたので写真のため止まると餌をやる人が多いのか近寄ってくる。奈良公園状態だ(左の写真)。宿泊は7人の登山者1組だけであった。850円で寝具を借りても2600円/泊である。4畳半ぐらいの畳をひいただけの部屋で空調も何もない上、自家発のため電気も21時までだが、自炊施設もあり登山者にとっては十分である。寒かったら、雨戸を閉めてくださいと言われた。夕食は、食欲もなかったので、カレーはやめ、ビール・ウィスキー、チーズやソーセージに、弁当の残りとカップ麺で済ます。それでも温泉の後のビールがうまく(山頂でがまんして持ち込んだのがよかった。ジュースの販売機はあるが酒はないようだった)、HP「山楽日誌」のAさんも、単独行で、ウィスキーをちびりちびりやるというのはこんな気分なのだろうなと思う。
露天風呂は石鹸の類は使えないが、評判通りのすばらしさだ。特に就寝前と早朝に入ったときは(着替え場所のみ一晩中電気がついていた)、満天の星の下、流れ星も流れ、至福のときを過ごす。たくさんの星でもオリオン、カシオペア、北斗七星は分かる。早朝の風呂は、やはり夜は寒く、開聞は暑そうなので、厚い下着から着替えるために体を温めようと思ってのことだが、正解であった。朝早かったが、入り口では、係りの人が起きていて、見送ってくださった。知覧特攻平和会館の見学のために開聞岳には早朝から登る必要があるので、えびの市営露天風呂を4時半に出発する。
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