梅雨も明け、本格的な夏山シーズン到来。昨年果たせなかった雲の平への山行は、テント泊でと考え、果たして、お供してくださる人がいるかが問題であったが、Iさんと有休をお互いに前後に 配置し、可能となる。
しかし不安は残る。一つは、2週間前の八経ケ岳後痛む右くるぶしだ。念のため整形外科で診察を受けるが、 使い痛みのようなもので膝に水が貯まるのと同じ現象とのことでさほど心配ないとのこと、しかし、荷物が重く標高差・長期間だけに心配である。二つ目は、徹夜で走り過去経験していない重い荷物を背負ってバテないか。3つめはテント泊であり、雷等天候の心配である。
その対策として先ず心がけたのは、軽量化だ。テント・シュラフは勿論、食事についても、フリーズ ドライを中心とする。味が分からないので選択はIBS石井スポーツの池田さんのアドバイスに従う。何とか15s以下にしたかったが、結局18sぐらいとなってしまった。果たして登れるのか?そんなことを心配し ながらも、とにもかくにも出発する。慣れた道だが、今回は勝川まで行かず、山田東で降り、国道41号線に入る。夜間工事により深夜というのに混んでいた。可児市以降は、快適な走りだ。
高山手前のコンビニで朝食と昼食を買い出し、いよいよ国道 158号線に入る。驚いたことに車が多い。みんな新穂高温泉か駐車場は大丈夫かと思った頃、乗鞍スカイラインの分岐が来てほとんどの車がそちらに行き一安心する。駐車場は迷わず分かったが、満車状態。ようやく1台入るスペースを見つける。仮眠をとらず出発する。バスセンターでトイレを済ませ、登山届けを提出する。
林道をワサビ平小屋を目指して歩く。日頃は単調な林道は嫌いだが、今回は荷物が重く、これが稜線まで続いてくれればと冗談を言いながら歩く。穴毛谷が見える辺りに、早くも多量の残雪が残っている。大規模な治山工事が行われているが、今年も大きな雪崩があり、近づかないようにとの 警告の看板が目立つ。途中、高山からのグループと話しながら、歩く。アルプスが至近距離とはうらやましい限りである。笠新道分岐の水場で水を飲むが、思ったほど冷たくなく、残念。軽装の数人が笠新道を登っていく。荷物がうらやましい。天下の急登も荷物次第か?
ワサビ平小屋を過ぎ、しばらく歩くといよいよ登山 道だ。早速、スノーブリッジとなっていて、肝を冷やす。そこからは、きれいな石畳のような登り。うまく整備してくれていて、歩きやすい。樹林とガレ場を繰り返し登る。天気予報がはずれ、ガスがかかっているため、暑さを感じずにいい。鏡平で晴れてくれたら言うことはないが。
他の登山者と抜きつ抜かれつ登る。下りの人が多いので 聞くと、双六小屋は6畳に20人だったとか。テントの重さを感じつつも正解かと思う。但し、昨日は、すばらしい天気で展望抜群だったとのこと。それが一番である。疲れ始めた頃、キヌ ガサソウに出会う。盛りの花で、はじめて見る。見たかった花だけに感激する。どこがシシウドが原か分からないまま、鏡平まで500mまで来ると、薄紫ともピンクとも言えるキヌガサソウに出会う。味わい深いが、白の方が優る。元気を出して、鏡平を目指す。
ようやくたどり着いた鏡平は、ガスの中で、池の向こうに槍は見え ない。名物のかき氷を食べるには、寒いが、わざわざコンデンスミルクを持ってきたことから、注文する。いちごが一番の人気 とのことで、それにする。元気の素となり、うまそうに食べる我々を見て、ぼっかの人も注文したので、ミルクをお裾分けする。大変喜ばれる。雨足が強くなったので、レインウエアを着て出発する。
弓折岳分岐までの道もお花畑があり、清楚なサンカヨウも咲き、心和む。分岐は雪が多いことから、休まず進む。晴れていれば、デポして、弓折岳稜線まで往復するところだが。それにしても、花が盛りで、ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、コバイケイソウ、ハクサンフウロ、コイワカガミが多い。残雪も豊富である。小さい池を右手に、お花畑の中の木道を進むと、クロユリが咲いて いるとの情報を得る。楽しみができ、肩に食い込む荷物が少し軽く感じる。アップダウンの後、コルに出るとクロユリの群落。黒というより濃い紫。聞いていたとおり、小さい花で臭いはBAD。その後日陰に咲いていたクロユリが純粋な黒色だったのがおもしろかった。
しばらく歩くと、ガスが切れ、双六小屋と右手に樅沢岳が見える。しかしいつもと同じで見えてからが遠い。30分強歩いて着く。手続きを済ましてテントを張るが、砂地で風が強く、苦労する。大きな石がないと固定できない。ただし水場とトイレは完備されありがたい。小屋の電話で、無事着いた連絡もできた。しかし余りの風で、食事はテント内でする。ロイヤルホストのレトルトカレーがメイン。食事後、早々に眠るが、私の側が風で押されたテントがシュラフに当たり、音とともに寒い。しょっちゅう、起こされ、睡眠不足にも かかわらず、眠れない。Iさんは、よく眠れたというので、びっくりした。
朝も、強風で、テント内で朝食のラーメン(ソーセージ入りワンタンメン)を作る。ガスの中を出発。晴れてくれることのみ を祈りながら歩く。当初は、双六山頂経由を考えていたが、ガスで何も見えないので、巻き道を通る。途中、アオノツガザクラの群落が美しかった。雪渓を数度横切り、三俣蓮華と丸山の沢でおいしい水を飲む。そこから、三俣蓮華に向かう途中、急に雲が切れ始める。
鷲羽と水晶の見えるチングルマの群落で30分ぐらい待つと、みるみる青空が広がる。大規模な雪渓に覆われた丸山の上には半月の月も浮かび、美しい。富山側の展望を楽しみに三俣蓮華岳山頂を目指す。分岐に荷物をテボし、空身で山頂を目指す。山頂からは、槍・穂以外は、すばらしい展望である。笠ケ岳、黒部五郎岳、北俣岳、薬師岳、水晶岳、鷲羽岳全てが青空の下に映える。神に感謝。槍・穂の雲の流れも速く、近 い内に晴れるとIさんが断言。盛んに写真を撮り、至福の時を過ごす。双六小屋に泊まり下山予定をせめて山頂をと思っていた人も、思わぬ展開に感激している。いつまでもいたいが、そうもいかず、三俣山荘を目指す。
途中、9:47とうとう槍の全貌が見える。三俣山荘で少し休憩し、黒部源流に下る。いくつもの小さな沢があり、いずれも冷水ですこぶる旨い。黒部川源流の石碑は、そぐわないが、素人分かりしてありがたい。急流を渡渉して、いよいよ祖父岳巻き道への急な登り。疲れが出た頃、雪渓手前で滑り、カメラが泥だらけとなる。徐々に高度を増 す毎に槍が岳の勇姿が三俣山荘の向こうに完全に見える。展望喫茶のお客さまはさぞや満足していることであろう。
更に登ると、まさに槍・穂の展望台とも言える場所でIさんが休憩していた。本当にすばらしい景色である。少し残雪も纏い、更に美しい。雪田近くでは、リンドウをたくさん見つける。何という種類であろうか。息も絶え絶えに進むと、日本庭園。背景は少し雲が出ているが、ハイマツの向こうに黒部五郎の勇姿が見える。間もなく、雲の平山荘が見え出すが、テント場が見えないと心配していると、祖父岳分岐を過ぎてようやく確認できる。沢を下る途中、転倒して泥だらけとなる。本日2回目。重い荷物と疲れが原因である。黒部五郎が正面に見えるハイマツの間の沢沿いにテントを張る。また、テント横の沢で、タオルをひたし、体をふき、すっきりする。
しばらくして、各庭園の周遊に出かける。天候にも恵まれ、最初のスイス庭園のすばらしさに言葉を失う。雲上の楽園とは、このことであろう。ヘリコプターが10万円程度であれば、家族をつれてきてあげたいと思った。水晶池も見え、高天原山荘の屋根も見える。スイス庭園にいた人のお薦めはアルプス庭園。その他は、今一つという。先ずは、雲の平山荘に料金の支払いとビールを買い求めに行く。小屋の人は親切で、世間話をする。雲の平山荘も日によっては、大変な混雑であること 、奥スイス庭園の雪は、残念ながら、ここ数日で急激になくなってしまったこと等教えてもらい、次の目的地のアルプス庭園に向かう。ゆるやかな木道の登りで、雲の平山荘と水晶岳をみて、写真集であこがれていた構図だと気づく。夕闇迫れば、あこがれの写真の雰囲気になるにちがいない。
祖母岳山頂のアルプス庭園からの景色は、まさに文字通り。名だたる山々が一望できる。堪能した後、奥スイス庭園を目指すが、コロナ観測所が見えると更にアップダウンがあることを知り、時間もおしていたので、断念する。テント場にもどり、夕食の準備。今日は中華。永谷園のチンジャオラオス、フリーズドライの中華丼・マーボ丼、ワンタンスープ。なかなかの味であった。しかし、フリーズドライの白飯が少し鼻につきだした。深夜2時再び風が強くなる。やはり1時間毎に起きる。
翌朝、ソーセージ入りチキンラーメンを食べ出発。雲の平山荘の唯一の欠点は、トイレが壊れていたこと。山荘までトイレのため、往復40分歩くものはなかなかいない。また、水は、冷たいとインターネットで見ていたが、ゴム管を通る間に暖かくなるのか、流れる沢は冷たいが、さほどではなかった。
祖父岳への登りは、ガスと風の中、苦労する。Iさんは絶好調のようだ。祖父岳山頂は、ケルンが立ち並んでいたが、風で寒く早々に出発する。岩苔乗越への道も、高山植物が多かった。途中、一箇所鎖場があった。また、黒部源流から岩苔乗越へ登る団体や高天原から登ってくる人が見えた。ワリモ北分岐を過ぎ、水晶小屋への道を進む。風が強くて閉口する。イワオウギが咲き、ミヤマオダマ キの群生が美しいが、飛ばされそうで、めでる余裕もない。苦労の末、水晶小屋に到着。思っていた以上に小さな小屋だ。
サブザックに水とカメラを入れ、水晶岳に向かう。風かなければ、そう難しい道ではないが、今日は神経を使う。徐々にガスが切れ、野口五郎岳がはっきり見える。ようやくたどり着いた山頂はガスの中。写真を撮り、早々にもどる。ときおり雲の平方面が見える。しかし、カメラの調子がおかしくなり、小屋で使い捨てカメラを買う。小屋前からは、黒部湖、立山、針ノ木、遠く白馬も望めた。
鷲羽岳を目指す。ワリモ北分岐までは、楽だが、そこからは上りである。ゆっくりマイペースで上り、ようやくワリモ岳にたどり着く。思っていた以上に難所でなく、ほっとする。一旦下って、最後の上り。Iさんは快調に登るものの、私は、ゆっくり。Iさんのもう少しの声とこれで最後との思いでようやく頂上に到着する。山頂は強風で寒く、フリースを着る。山頂で出会った人から、明日、天気が崩れること、天気がよければ、三俣山荘から太郎平まで黒部五郎を越え行くことを聞き、彼の荷物の大きさとともに唖然とする。
下りになって、鷲羽池があったことに気づく。槍ケ岳が見えず、一眼レフがあっても、もう一つだが、常念、大天井は見える。池には、まだ、残雪もあった。三俣山荘までの下りも、疲れているので慎重になり、コースタイムより長い1時間をかけた。天候の悪化を懸念し、テントにするか、小屋素泊まりか悩む。三俣山荘に公衆電話があったので、17時の
天気予報は、まし(明日の朝までの降水確率40・50%)だったので、最後まで完結したく、テント泊を強行する。キャンプ地は当初小屋に近いところに張るが、虫が多く、移動し、沢沿いとする。
三俣山荘の受付の女性も雲の平といっしょで親切であった。更に、今年出たばかりだという絵はがきに写真家でオーナーの伊藤正一氏のサインがもらえ、うれしかった。夕食は、雨を懸念し、早めにする。阪神百貨店で買った700円のビーフシチューは値段だけのことはあった。Iさんが余った白飯にポタージュスープと辛子をたくさんかけて食べたのには、本当に驚いた。私は、食欲がないので、Iさんにいただいた塩昆布とお茶漬けでカロリーを確保した。
夜20時頃から雨となり、雷も鳴り、心配したが、大雨にならず、ほっとする。また2時頃からも雨となったが、テントをたたむ4時頃は、雨があがり助かった。ライトをつけての出発となったが、鷲羽岳が三俣分岐まで見え、見送られるようでうれしかった。行動食だけで出発したので、お腹をすかし、また雨足も強くなる中、倒れるように双六小屋に到着する。ラーメンかカップヌードルを求めるが、朝早いためラーメンは準備中、カップヌードルはなかったが、カレーは用意できると聞き、ほっとする。入り口にダンボールを敷き、座れるようにしてくれた心遣いもありがたい。オーナーの気持ちがきっちり従業員に行き届いている。更に写真家の小池潜オーナーもいらっしゃり、2種類の絵はがきにサインをもらう。言葉も添えてくださったのが、うれしかった。
カレーを食べ、息を吹き返し、出発する。しかし、雨足が強くなるばかりだ。上りは特につらく、更にザックカバーをしていなかったので、水を含み、重くなり苦労する。稜線上は、コバイケイソウ、ハクサンシャクナゲ等の花々に慰められるものの、鏡平手前の頃は、靴の中もジャブジャブ、パンツもベチョベチョ状態だ。新穂高温泉まで本当に遠く感じた。気にしていたスノーブリッジも壊れていたのには驚いた。沢も恐ろしい水量で流れていた。また、ワサビ平小屋からの道中は、雨足が強く閉口するとともに、岐阜県の山岳救助の車が林道を走るのを見て、目的外だとIさんと二人で、うらやましくぼやいた。
ようやくたどり着いた新穂高温泉で、深山荘の風呂に入るが、シャンプー・石鹸が使えず、がっくりする。しかし、露天風呂は3つもあり、楽しめた。洗える温泉を求めた結果、「ひがくの湯」とする。
800円と高かったが、食事もとれよかった。帰り道は、Iさんが前日虫に目の辺りをかまれ、 左が見えにくいので、ほとんど私が運転し帰った。家に着いたときは心からほっとした。全身全霊ち込んだだけに余韻の大きさは、これまでにないものだった。
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