近百も残り10座を切ったものの、近百でも無雪期に登るのは、最も手強そうな「三国岳」が残っている。単独では辛いと思 っていたところ、関百やヤマケイの分県登山の近畿の各県を制覇しているMさんが以前からいっしょにと言ってくれていたので、時期を探っていたところ、今の時期がニッコウキスゲが美しいとの情報がネットであったので、早くから決めていた。
さらに数日前の懇親会で会社の若いK君も是非ということになり、心強くなった。問題は、入梅もしたこともあり、天気だが、それもクリアされた。コース は、これもネット情報で、Mさんが岐阜側からがいいとのことだったので、前回の三周ケ岳とは違うルートで楽しみとなった。
前夜、飲み会も痛飲することなく済んだので、先ず先ずの睡眠を確保できた。Mさんは、予定より早く寮に迎えに来てくれていた。そのため、K君のピックアップも早くなり、近くのコンビ二で昼食を仕入れ、尼崎ICから名神に乗る。 和歌山の自宅からと違い楽である。
日曜早朝の名神は、さすがに車は少ない。神田Pで休憩後、木ノ本ICで降り、国道8号から303号に入る。相当の金をかけ、随所で改良中だ。横山岳の登山口分岐を過ぎると、新しい3kmもあるトンネルができていた。
資料館のところから、池ノ又林道に入る。全線舗装なのがいい。坂内バイクハウスには、多数の車とバイクが止まっていた。ここで本来は登山手続きをするようだ。さらに進 むと道は細いが、結構渓流釣りの車が多い。
林道終点の登山口までは国道に10kmの表示があったが、14kmほどあるようだ。手前にはトイレもあり、50台ほど止められる。区画舗装された立派な駐車場だ。早20台ほど止まり、マラニックとかで、山岳マラソンランナーも多いようだ。キャンパーも手馴れているようだった。
ここは標高が750mもある。一度、沢に下り、2回橋を渡る。出会った若いカメラを持った下山者に聞くとニッコウキスゲが盛りとのことだが、この沢のたにうつぎも満開だ 。10分ほどで沢を外れると、ゆるやかな巻き道となる。20分ほどで水場があり、冷たい水が豊富だった。冷たくて甘い水だ。
その先に健康リゾートふれあい街道夜叉ケ池コースここは1/2地点の標識があったが、時間的には1/2までは到底いかない。それにしてもぶなの多い自然林の道はすばらしい。ほどなく北アルプスを思わせる壁が見えてきて、コースの
楽しさに満足する。やまつつじも彩りを添える。
マラニックの人がたくさん降りてくる。ほどなく幽幻の滝だったが、滝とは言え ないものだ(左上の写真)。近くで見ると一段だが、少し登ると二段になっていた。それでも立派な案内板があり、「夜叉姫がこの滝の水で清めて聖域に入り、池底へくだり身を潜めたという。この滝の水は肌を若返らせ、長寿が叶うとも伝わる。仙境の地にて所在が分からず幻の滝と言われていたが、遊歩道コース新設の折に不思議と出現したものである。」と書かれていた。二段目にはニッコウキスゲが咲い ていた。休んでいた夫婦者が持っていた10倍ズームのデジカメで見るとよく見えた。
その先にはギンリョウソウも咲いていた。しばらく進むと何と谷筋には、豊富な残雪があり、登山道を横切るように残っていたのにはびっくりした。そこを過ぎると大きな切り立った壁が立ちはだかるが、昇竜の滝と書かれた案内があった。
この壁をじくざくに登る。何箇所かロープがあるが、慎重に進めば、危険ではない。風が心地よい。付近のニッコウキスゲの大群落に感激していると(左の写真や右下の写真の黄色い点はすべてニッコウキスゲ)、コバ イケイソウもたくさん咲いていて純白で清々しい。ニッコウキスゲに負けない美しさだ。
登りきると、左三国岳・右三周ケ岳の標識があり、その標高表示に距離と間違わないように「標高」とマジックで注意書きされていたのが、素人も多い人気の「夜叉ケ池」を表していておもしろかった。
この辺りはイブキトラノオやアザミの花も多い。雪解けの終わった池は期待通り美しい水をたたえている。それにしても岐阜側の斜面に咲き乱れ るニッコウキスゲの見事さは予想をはるかに越えていた。
休憩後、一上りすると、夜叉ケ池と夜叉壁が見事だ。三周ケ岳も霞んではいるがよく見える。1209(夜叉ケ池山または夜叉丸とか呼ばれているとのこと)m峰を過ぎると人はいない。笹の道だ。三国岳がよく見える。
こんな笹薮にもコケモモやイワカガミが結構咲いていて驚く。標高差30mを下り、登り返すと少しで1206m峰(アルペンガイドでは、夜叉姫ケ岳と呼びたい)であった。
ここから標高差100m強を下るが、ここからは笹薮が猛烈に手強くなる。ガイド本では無雪期に三国岳に行くのは不可能とまで書かれているようだ。中八人山以来だが、向こうはMさんの話によると、私が登ったころと違い笹薮は刈られて整備され たとのことだ。
ここも2003年は大したことがなかったらしいが、笹はすぐに伸びる。コース中、ほとんどが笹薮に感じられた。油断をすると足がひっかかる。まむしみたいなへびもいた。背丈を越す笹薮をこぐと、衣服には小さな毛虫もたくさ んついている。何を好き好んでこんな山を歩くのか。答えは「近畿百名山」だからしか答えはない。私とMさんは近畿百名山という目標があるからいいが、K君は気の毒だ。これに懲りていっしょに来る仲間が減らないことを祈るのみだ。
樹林帯の中、ゆるやかな上りを進むと山頂といきたいが、最後はやはり笹薮であった。頂上は少しの刈り払いと2つの山名標識のみだ。南東に高い山が見えるが、三角点もない。おまけにたくさんのハエがまとわりつく。
Mさんが作成してきてくれた新しい山名標識を加える。私は初めての経験で、この山だけにうれしい。多すぎる山名板は問 題だが、ここは許されるだろう。しばらくはこの山を報告するネットが楽しみだ。写真だけ撮り、早々に戻る。ここでビールを飲む気はしない。
帰りは紐がよくほどけた。途中休んでMさんから氷水をもらいようやく生き返る。1209m峰を過ぎると、夜叉ケ池の周りは人で溢れているのが見えた。ニッコウキスゲを十分めでた後、池に下る。
池の周りは、白い花だと思われたのは、すべてモリアオガエルの卵だ。池の中を見ると、イモリがやたらに多い。卵が孵化す るのを狙っているのだろうか。ヤシャゲンゴロウも結構いて、すぐに見つかる。1cmぐらいの小さなものだ。
テレビカメラも撮影に来ていて、指導員にインタビューしていた。中年婦人が手を入れただけで指導員に叱られていたが、注意表示もなく気の毒であった。

それにしても完全燃焼後のビールの美味いこと。Mさん恒例のチクワキュウリがよくあう。至福のときである。
名残惜しいが、14時に下山開始。慎重に下る。小さな子供もまだ上がってきていた。水場で生き返る。駐車場にはカブスカウトがたくさんいた。渋滞もなく 寮にたどり着く。寮で風呂に入り帰宅する。
最後にガイドブックの紹介。「天候は雨の場合が多いのですが、夜叉ケ池に関しては、雨が降ったら日頃の行いが悪いのではなく、夜叉姫が喜んでいるのだと思ってください。少々の雨は喜んで歓迎してくれていて。どしゃ降りの雨は美人にやきもちをやいているのだそうです」
これで近畿百名山も93座。猛烈な笹薮の苦労も、ニッコウキスゲや夜叉ケ池を駆ける風の香りとともに、良き思い出となろう。MさんとK君に感謝。
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