2週間振りの山である。この間に和歌山市民図書館にリクエストしてあった山口耀久氏の「北八ツ彷徨」と「八ヶ岳挽歌」が購入されたと連絡があり、じっくり味わうことができ、実際の登山以上の想いが残った。評判通りの名著だと思う。中でも、北八ツ彷徨の岩小舎の記という随想の中の『結局、ぼくらの岩小舎は、ぼくらだけの小さな領域の開拓に一役を買ったにすぎないのだが、それだけに、はなやかな思い出というものはないよ だ。それはむしろ平凡で、ありきたりのものだが、人間のひとりひとりや、ある仲間たちのなつかしい思い出というものは、たいていそういう性質のものではないだろうか。どんなありふれた人生の片すみにも、ひとそれぞれの、なつかしい、たいせつな思い出というものはある。ぼくらの岩小舎の思い出が、水を汲んだり、薪をあつめたり、火をおこしたり、いわばこの世のどこにでもあるような些細な生活のひと齣ひと齣でできあがっているとしても、首をかしげるにはあたるまい。山登りというものは、人間がふだん忘れている、いちばんたいせつな、いちばんつつましい幸福の条件というものを、よろこんで教えてくれるものだからだ。たべることと、寝ること、それにときどき歌や空想が参加すれば、ぼくらの岩小舎の幸福は完成す る。ぼくの思い出も、この周辺にしかないようだ。』という記述が印象に残った。何故、私も山が好きになり、山への想いが続くのか教えてくれるようだ。
そんな想いなので、I夫妻が推奨していた近百・関百に選ばれていた子の泊山か山楽日誌の浅尾さんが先々週歩かれていた能瀬妙見山近辺でもと思っていたが、天候の回復が気になり、明日の出張も朝早いので、近辺の山となってしまった。山と渓谷社発行の大阪周辺の山250にも紹介されている高森山(三等三角点)と四国山だが、このコースは、1999の2月20日にも歩いている。ただ、そのときは妻に西ノ庄送り加太の深山迎えをお願いしたので、今日はせめてしっかり歩こうと考え、自宅から歩き始める。
99年当時は今のように新しい山を目指すことはせず、歩くことが主眼でエリアマップの紀泉アルプス周辺図に出ているコースをしらみつぶしに歩き、コピー図は赤線で埋まっていた。加太線八幡前近くのファミリーマートによると、和歌山のはや寿司に似たさば寿司おにぎりなるものが新製品として出 ていたので早速買ってみる。コンビ二の開発力にはおそれいる。
県道粉河加太線を進むと、パームシティから来る広い道と合流し、少しで、左手にローソン・右手にパーティーハウス(オークワ系の衣料品店)が見えると、西ノ庄のバス停で、パーティーハウスの横にくるみ書店という大手の古本屋があり、その前を右折して進むと、つぐにT字路で、←和歌山西高校、森林公園の標識があり、左折して上るように進む(左上の写真)。
一上りすると西高校の正門で、少しゆるやかになる。右手に不法投棄が見られた。森林公園への道はぎりぎり対向できるという幅の道が続く。舗装道路は味気ないが、車はほとんど通らず、小鳥が飛び回る。この辺りも不法投棄がひどかったが、「廃棄物理の処理と清掃に関する法 律」により不法投棄すると1年以下の懲役か300万円以下の罰金という看板がいくつもあり、フェンスもされているので、めっきり減っていた。本当に情けない話だ。
西高校から15分ほどで、右手に真新しい「史蹟葛城山二之宿観音堂」という石柱が建ち、紀州備長炭葛I州燃料の看板があるので、コースをそれ、右手を覗いてみる。この道は軍道跡との表示もある。すぐに備長炭を生産する大きな建屋があり、うばめがしが並んでいた。鶏が放し飼いにされている。そしてラッキーなことに梅の古木が何本もある。3から5分咲きというところか(右上の写真)。梅とるな。畳捨てるなの看板が何枚もあるのが悲しいが。それでもみっけもんという感じで喜んで元の道に戻る。
ここから25分で四国山の取り付きに当たる場所に出る(左上の写真)。トリムコースの折り返し地点で駐車場も広い。舗装道を離れ、一のぼりすると、平たい尾根道となり、展望台のある四国 山だ。まさに360度見渡せる。北には目指す高森山(右の写真)。そして東によると関空の全日空ゲートタワーホテル、さらに東には紀和泉アルプス、南東は和歌山城等紀ノ川平野が広がる。そして住金の和歌山製鉄所、南は有田方面の海、南西には四国も見え、西から北西、北北西は友ケ島や淡路島が見える。昨日、妻がもらってきたアサヒビールのスパークスという新発売の発泡酒と鯖寿司を食べる。スパークスは結構いけた。
寒くなってきたので、ほどほどに高森山に向かうと7分で広場に出た。広場にはすぐ左手に4つのコンクリートのテーブルが並び奥に5つの東屋付きのテーブルセットが並ぶ。高森山への道は、広場を置くには進まず、4つのテーブルの対面に当たる付近から90度右折して、展望台方面に向かうのだが、間違って、そのまま下ってしまう。あまりに下っていくのでおかしいと感じ少し戻り、右の踏み跡を登ると縦走路に出たので、取り付きを確認するため、右に戻ると急斜面の上に展望台があり、下ると広場の4つのテーブル前に出たので、正しいルートが判明したのだった。ここの展望台は四国山のものより立派たが、展望は四国 山がはるかに優れる。
ここからは今までと違い細い道で雨後で滑りやすいところもある。下草もあまり刈っていないので、昨日の雨で濡れる。アップダウンはさほどでもなく、少しで左手に小さい岩をよし登ると高森山の標識もある箇所に出たが、(後で分かるが)偽で、三角点らしきものもある広場で(左の写真)、前にゲートタワーも見えた。縦走路を進むと、右手に紀和泉アルプスの山々が見え、高森山は前という矢印があるので、高森山は過ぎたはずだか、変だなと思いつつ進むと、森林公園のマップが書いた地図があり、確認すると、本当の高森山はまだ、先で森林公園や大川峠方面への分岐から数分で、左に笹に埋もれかけたベンチ三個があり(何となく記憶があった)、すぐに本物の山頂に着いた。
大きな標識とはっきり三等三角点と読み取れる三角点があった(右の写真)。一 度来たことがあるはずなのにあまり明確な意識がないのはどうしてか。北北西が伐採され、明石大橋も見えた(左の写真)。元の分岐に戻り大川方面を目指すと、下草のない、うばめがしの多い照葉樹林を気持ちよく進むと、3分で森林公園との分岐でその先は再度下草の多い道が少し続いた。この辺り刈り取りが必要だ。10:19に前回左下への尾根をルートかと思い確認した箇所を過ぎる。この辺りも美しい森だ。10:22に大川峠と加太方面の分岐に出る。泉州労山と書かれた大きな白い標識が木にかかり、矢印で方面が示されている。前回大川峠方面に行っていないので、色気が出るが、トンネルを10分も歩くのはいやなので、加太方面に向かう。気持ちの良い道で井戸らしきもの2つと赤いやぶ椿が印象に残った。
左下に森林公園からの舗装道が見え、前方上に加太の国民休暇村が見えても、結構舗装道まであった。車一台も通れそうだが取り付きには標識もなく、移動可能な柵には、駐車ご遠慮くださいの看板があった。加太から来ると左手にカープミラーとS字カーブ標識があり、赤や黄のテープが捲いているのが目印だ。青空の下、10分ほどで左下にオートキャンプ場が見えほどなく県道65号線に出た。結局家を出てから歩いている人には誰一人出会わなかった。加太方面に向かい、深山の海岸遊歩道で(ここにはきれいなトイレもある)、友ケ島と淡路島をながめつつ、カップヌードルの昼食とする。風には海の香りと共に春の香りもする気がする。海岸線を20分ほどで加太駅に着くとさほど待つことなく、電車が発車した。
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