谷川岳 1963.2m(トマの耳)1977m(オキの耳)

 


データ】     

2003年8月24日(日) 晴れ 歩行時間4時間30分(ロスタイム35分含む)
8月24日(日)

東京5:02 京浜東北 5:09上野着 5:13発 高崎6:54着 7:09発 水上8:10着8:17発 土合8:26着

8:43スタート <7分> 8:50新道分岐 <3分> 8:53〜56慰霊塔 <8分> 9:04ロープーウェー駅 9:06乗車 9:16天神平駅 9:29スタート <16分> 9:45天神峠分岐 <17分> 10:02熊穴沢避難小屋 <20分> 10:22〜25コブ <10分> 10:35コブ <15分> 10:50〜52コブ <8分> 11:00〜03天神ザンゲ岩 <11分> 11:14〜25肩の小屋 <3分> 11:28〜31トマの耳 <10分 写真撮影> 11:48〜52オキの耳 <13分> 12:05〜39奥の院 <13分> 12:57オキの耳 <8分> 13:05トマの耳 <3分> 13:08肩の小屋 <35分> 13:43〜45熊穴沢避難小屋 <12分> いわお新道 13:57小学生発見Uターン <18分> 14:15〜23熊穴沢避難小屋 <13分> 14:36天神峠分岐 <12分> 14:48ロープーウェー天神平駅 15:00山麓駅 <10分> 15:10土合駅

土樽15:22発 水上15:44着 15:55発 高崎16:55着 17:10発 上野18:54着

 
温泉
   谷川温泉湯テルメ谷川

メンバー
    単独
   


都市対抗野球が土曜日の18:00からということで宿泊せざるを得ないこととなったことから、あこがれの谷川岳を目指す。コースは、いろいろ考えられたが、始発でも土合着が8:30であることから、一ノ倉岳・茂倉岳から土樽駅に降りるコースは、土樽駅の上りが15:22から18:29までない上、茂倉岳から駅までの下りの長さにこの暑さで耐えられるかという問題がある。中芝新道は、すべて満喫できる周回コースだが、コースが不明で危険等のHPが多い。そんなことから、上りはロープーウェー、後は巖剛新道を下るかいわお新道から谷川温泉に下ることとし、状況によっては、登る前に一の倉沢を見学することとする。

谷川岳には、大学生の頃、前橋に単身赴任していた父に連れられ、一の倉沢を見学したことがある。山が好きだった父に、死者の耐えない山だと教えられたことと、岸壁を見て人間が登れるとは到底思えないと感じた記憶がある。


近年山に魅せられ、谷川岳へのクライマーの思いに関する本もたくさん読んだ。特に故森田氏の生涯を描いた佐瀬氏の「狼は帰らず」や安川氏の「回想の谷川岳」が印象に残っている。


今回のもう一つの狙いは、「青春18切符」を使うこと。囲炉裏の各HPをみていてそういうアプローチもあるのかと思っていたので実行したかった。ただし、ネックは5枚つづり(5枚で11500円)であること。金券ショップに残一枚で運良く売っているかネットのオークションしかない。オークションは確実性と迅速性に欠け、値段も安くない。金券ショップもだめかと思ったところ、なんと1週間の貸し出し制で、一枚当たり定価の2300円で使えるという。思わず、「これで商売になるのですか」と聞いてしまった。それにしても有り難い制度である。土合までの往復約6000円が2300円となる。


東京は都会で、水上発の始発に連絡する電車がつながっていた。前日は遅かったが、土・日のみ特別割引となっている東京駅近くのビジネスホテルは設備もよくよかった。私の体内時計は正確なようで、4時20分の目覚まし予定が、18分に自然に目覚めた。真っ暗な中、コンビニに2件より、朝と昼の食事を調達する。


東京発の京浜東北も上野で下りた人達も、高崎線の車内も、登山姿の人が多い。皆好きこそできることである。高崎までは、うとうとと夢見ごこちだ。都会のビルによくある温度計のネオンは27度と表示されていた。席は70%ぐらい埋まっていた。昔と違い、この間の列車にはトイレがついていない。2時間もかかるだけに改悪とも思えるが、ダイヤが増えているからかもしれない。


高崎発の水上行きを待つ登山姿の人達も、青春18切符の話をしていた。1時間ほどだが、オレンジとグリーンの古い列車なのでトイレつきだ。上越線でも赤城山や榛名山を見ながらうつらうつらする。席は満席だ。水上温泉は各旅館も古くなりひなびていた。高速道の発達で泊まらなくなったのであろうか。


水上から長岡までの列車は2両編成だ。約10分で「日本一のもぐら駅」の土合駅に着いた。上りは地上駅だが、下りは地下駅で、階段の上り口にあった解説によると、地下ホームは、標高583m、地上の駅舎は標高653.7mで、差は70.7m。階段は462段、長さは338mとのこと。上り口から見上げるとすごい。しかし段差が小さい上に10段ごとに何歩か歩けるスペースがあり上りやすくなっている。おまけに10段毎に何段かの表示がされているので、励みになる。


前を歩いているグループがやはり青春18切符の話をしている。「何故JRは、宣伝しないのか。」「あまり宣伝すると損するからよ。」という会話には苦笑した。駅でトイレを済ませ、舗装道をロープーウェーの山麓駅に向かう。上越線の踏み切り近辺のススキには穂が出て、秋を感じる。風も秋風だ。雪よけのトンネル手前の左手に蓬峠への「新道」の案内があった。トンネルを抜けると、右手に700名にも及ぶ遭難者の慰霊碑がある。


手を合わせ、ご冥福をお祈りした後、名簿をたどると、H14年お一人、H13年お二人H12年お二人の遭難者の名があった。一頃に比べたら少なくなったのは、技術や器具の進歩だろうか、それとも本格的なクライマーが減ったからであろうか。たぶん後者であろう。


ロープーウェーは待つこともなく、すぐに乗れた。紅葉時期は大変な待ち時間のようだが。料金は片道1000円、往復で1900円だ。ゴンドラは5人乗りぐらいだが、一人で乗った。早、下りてくる人もいる。天神平駅では展望に恵まれ、谷川岳の「耳二つ」と呼ばれる双耳峰と白毛門、笠ガ岳、朝日岳に加えて、展望図をみると、武尊山や燧ガ岳も見えているようだ。


写真を熱心に撮った後、熊穴沢避難小屋に向かう。コースタイムは60分となっているが、HPには30分の記録も。天神平から2.1kmとの表示だか、そんなにないかもしれない。天神平から山頂までは3.9kmとのことだ。少しだが上りもあり、暑さとで30分は無理かなと思ったが、それぐらいで着いてしまった。途中の木道も雪でか早くも傾斜したり痛み始めていた。



小屋は新しいが小さい。ここからは鎖もある(使うほどではないが)急登となる。山頂部分はガスで隠れている。3つぐらいあるコブを目標にゆっくり上る。ミヤマアキノキリンソウやオヤマリンドウが咲いて秋色だ。二つ目のコブは色鮮やかなトリカブトが咲いていたが、帰りには心無い人に一つ取られていた。三つ目のコブからは、右手の笹原が美しい。天神ザンゲ岩でたらみゼリーを食べ一息入れる。ここからは、がれた階段を上る。最近整備したようだ。上りきったところが肩の小屋であった。あっけなく着いたといえばそうだが、日が照ると苦しかった。肩の小屋は新しくすばらしい施設でバイオトイレもある。谷川岳遭難救助隊の馬場さんが管理人になっているとのことでお会いできないかと思っていたところ、会えてお話する時間が持ててよかった。


トマの耳までは一上り。三角点はこちらにあるようだが、人も多く確認できなかった。足元にはハクサンフウロやシモツケソウも咲いていた。オキの耳まで足を伸ばすと、だんだんガスが切れてきた。のぞきと呼ばれるところはどこかと少し奥に進むと、奥の院があり、不釣合いの立派なコンクリート製の鳥居もあった。このあたりに来ると、ガスがすっかり切れ始め、絶景となる。一ノ倉岳から茂倉岳、一ノ倉の岸壁が右に見える。クライマーのすごさが伝わる。一ノ倉への上りはガイドブック通りきつそうだ。ガイドブックを見ると北には巻機山も見えていると思われるが山座同定ができない。20万分の一の地図が必要であった。久しぶりにすべての山が見えるという感の天気だ。燧ガ岳や西に見える苗場山は特徴的なので分かる。またトマの耳から仙ノ倉から平標山までの稜線が殊のほか美しく、北海道の日高山脈の写真を見ているようだ。斜面の笹が光る。地域地域によって、山域に特徴があるのがよく分かる。私にとっては上越はお気に入りの場所となった。


団体さんの横で食事をし写真を撮りあう。天候と展望に恵まれ、今日のビールは特にうまく至福のときを迎える。すばらしい景色を思う存分眺める。オキの耳から少し離れだけなのに静かな別天地である。割子そばが冷たくないのだけが玉に瑕だ。


さぁ谷川温泉だということで、団体は抜かさせてもらう。登ってくる人は暑さで皆へとへとだ。避難小屋から、いわお新道を下るが、道はガイドブックではよく整備されているとあるが、思ったよりよくない。前方に小学生が見えた。一息入れて休んだ後、追いつくと、「ちきしょうどうなってんだ」と小学生がぼやいている。呼び止め問いただす。どうやらロープーウェーに行くべきところを間違って来てしまったようだ。泣いてはいない。名はK君、小二。おじいちゃん、お父さん、妹たちと来たようだ。盛んに携帯電話で連絡を取り合っていた人たちだ。先ずはスポーツドリンクを飲ませる。一人で戻らせるわけにはいかないので、「疲れた」を連発する子をなだめつつ、小屋に戻る。私のストックをとり進もうとするが無理なので、ところどころ引っ張り上げる。


こちらも再度の上りとなりへとへとだ。何とか小屋に着き「遭難騒ぎがありませんか」と言うと、父と妹が現れた。経過を告げ、注意する。おかげで今からでは谷川温泉「湯テルメ」に入り、最終のシャトルバスに乗るのは危うい。若い父親は事の重大さと私にかけた迷惑度合いが分かっていないのかお礼の言葉も簡単であった(周りの人の方が、いわお新道を通る人がほとんどいないことを知っていて「よかった。よかった」と言ってくれていたが)。いわお新道をあきらめて、ロープーウェーで下り、土合発15:32の列車を目指す(土樽の発車時刻と間違え、このときは15:22発と思っていた)。大急ぎで飛ばす(後で思うと天神平から保登沢コースを下り谷川温泉であれば最終のシャトルバスにぎりぎり間に合ったかもしれない)。



ロープーウェーで乗り合わせた人に経過を話す。土合駅には15時10分には着いた。ホームの風がここちよい。しかし失敗は水上寄りに乗るべきであったこと(前であれば、高崎よりの電車への乗換えが目の前)。水上からも立つことになり、ようやく新前橋で座れた。高崎でも登山客等たくさんの人でぎりぎり座れた。これも青春18切符のせいか。いろいろあったが、展望に恵まれたのが何より良かった。


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