天狗岳・みどり池 |
【データ】
【メンバー】 |
北八ヶ岳は、山口耀久(あきひさ)氏の「北八ツ彷徨」を読み、それを題材にしたNHKスペシャルの「映像詩 四季八ヶ岳」(上条恒彦の朗読は今も耳に残る)を見て、何としても「しらびそ小屋」「みどり池」に行って、ぼんやり過ごしたいという想いが強かった。 「北八ツ彷徨」の中の「北八では、何時までにあの峠について、何時までにあの頂を出発しなければならないというような、時間にしばられた歩き方はしない。いいところがあれば、寝転んで煙草をすって、いろんな空想をあたためたり、ヒガラやメボソのきれいな声に耳をすませたり、気がすむまで腰をあげない。」という一文は、山を愛する者、山には色々な楽しみがあると思う者にとっては、忘れられない魅力的な一文だ。 また、しらびそ小屋主人の今井行雄さんは、色々な方が飾らない人柄を慕い、鳥やリスたちのえさ台を作り、環境保護のために小屋のし尿問題にも取り組む姿勢に共感し、常連客にとっては、そんなご主人とストーブを囲んで話をするのも楽しみの1つという。今は、息子の孝明さん夫妻に代替わりしたというが、是非ともお会いしたいと願っていた。 稲子湯まではバスもあるので、単独でもとも思っていたが、できれば、KW君やKN君とテント泊でもと願っていたところ、KN君と日程があった。KN君は行徳から車で20分ぐらいのところに住んでいるので、渋滞を避けるために、朝4時出発とした。ただ、土曜日の天気予報が悪く、金曜日の夕刻の予報で躊躇したが、折角、KN君がカレー鍋の準備をしてくれているし、日曜日の予報がまずまず。雨がひどかったら、しらびそ小屋に素泊まりすれば良いとの思いで決行とした。 3時すぎには起きねばならぬが、6時間ほど眠れた。KN君は、4時前には迎えに来てくれていた。残念ながら、首都高速で雨がぽつぽつきかけたが、北に行くほどいいだろうと思っていたところ、その通りで晴れ間も見えていた。出発を早めた甲斐があって、渋滞もなく、コンビニに立ち寄ったり、景勝地での撮影等休憩をしたのに、順調に進み、みどり池バス停には、3時間で着いた。行徳から約220kmだ。ただ、ナビは林道はルート設定しないとのことで、実はバスルートとは逆方向だったようで、みぢり池バス停前無料駐車場、稲子湯を通り過ぎてから、気づいてUターンした。10台ほど止めれそうなみどり池バス停駐車場には、まだ駐車数は5台ほどで、スペースがあり、助かった。 みどり池までは、たかだか2.2kmとのことで、KN君は、クーラーバックをかついで歩く。林道をショートカットする道を二つこなすと、再度、駐車スペースがあり、3台止まっていた。ゲート越えなので、小屋関係の車だろうか。プリウスは??であるが。 カラマツの純林やダケカンバの純林等気持ちよく、森林鉄道跡のみどころもあり、こまどり沢までは、あっという間であった。ここからは、昨年の台風9号の影響で、道が付け替えられた。以前ほど広くはないようだが、一般的な登山道となっていた。苔むした森林は、北八の雰囲気が色濃い。こまどり沢から小屋まではわずか600mだ。 一上りで、森林鉄道跡に出て、小屋まで300m。平坦な道を歩くと、先ず、野営場、先にしらびそ小屋がある。5張ぐらいできそうで、食事に便利な石のある一番手前か、雨を避けられそうな一番奥か悩んだが、一番手前とした。正面に硫黄岳の爆裂火口が見える。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 小屋に手続きに行くと、孝明さんが昨年けがした山ガールを背負って下山し、靭帯を損傷し手術したため、今年は行雄さん夫妻が小屋を守っていた。みどり池としらびそ小屋は、思い描いていた通りで、独特の風情だ。小屋も特に旧がよく、中の薪ストーブは欠かせない。一人700円。水は小屋でもらう。和紙の絵葉書を記念に買う。 ここは、標高2097m。小屋前の大きなダケカンバやえさ台に集まる小鳥に心が安らぐ(上の写真)。前夜泊の方が、朝はりすが来ていたという。 奥さんの昨日は、雷雨が激しかった。早めにテントを張った方が良いというので、早速張る。ARAIのテントは2005年以来が、後処理が良かったので、全く問題なくきれいで、また、簡単に張れた。 小屋に水をもらいに行くと、行雄さんがいて、しばらくお話をすることができた。今日はどちらへという質問に、このみどり池でゆっくりすることが目的なのでと答えると、「それはいい、そういう山登りはいい」との言葉だった。また、「ここのテント場は水はけはいい」という力強い言葉をいただく。 雨が降らないうちに、KN君が用意してくれたカレー鍋を食べた。ルーも材料もばっちりで、満足した。凍らせたビールが溶けていないので、昨年のKW君と登った針の木岳のとき美味かったサントリーの樽買ウイスキーがもう一本あったので、ロックで飲むと最高である。何しろ朝の9時からの宴会。さすがに山でのこんな時間からの酒宴は記憶にない。とりとめもない話をしながら仲間と飲む時間は「大人の夏休み」という言葉がぴったりだ。満足して、食べて、散歩に出かけると、薪ストーブ用の切る木を見定めている方に出会った。そこに今井さんも現れた。直径10cm以下、枯れた物が営林署に許可されるという。 ピンクのテープのある小道の行き先を問うと、「苔庭」で今井さんがお奨めだというので、探検気分で訪ねる。すぐに目的地で、石と苔と石楠花等が箱庭のような雰囲気をつくっていた。 この頃から俄かに曇り出し、天気予報を信じたのが良かった。ビールも溶けたので、コンビニで買った、枝豆・鶏皮揚げ、スーパーで買ったいわしのみりん干しなど豊富な肴に酔い、私とKN君は、14時頃から雷の音を聞きながら、2時間も昼寝をした。こんな経験もない。寒いぐらいの温度でシュラフにもぐりこむ。 起きてみると雨でテント周りに水が溜まっていた。あわてて流れを作り、浸水を防ぐ。それで落ち着き、テント内で、再度の飲み会。サラダや芋のにっころがしなど食べ、仕上げに昼食用の冷やし中華で大満足。満腹となった。その間も強烈な雷雨だった。 18時頃ようやく雨がやんだので、小屋に水をもらいにいくと、小屋前で東京トレッキングクラブの人たちと雑談する。 明日の天候回復を祈り、19時半には、うとうとしだした。何回か目覚め、雨音に心配する。予定の3時半では、雨音がするので、4時過ぎまで寝て、朝食だけとり、明るくなって、天気を確認すると、何と晴天であった。嬉々として準備し、出発する。軽装に加え、美しいモルケンロートを見ると、うきうきする。そんなわけで、結構急登となる中山峠までも、わずか1時間強で登った。途中の落石注意地帯も無事乗り切り、中山峠手前で、カワラナデシコを見た。 中山峠は、標高2410mとのことだ。黒百合ヒュッテに泊まり、にゅうに向かう人に会う。天狗岳に向かうと歓声をあげたくなるような東と西天狗、にゅうや稲子岳の絶景の展望場所に出た。KN君と天候回復の幸運を喜ぶ。 ![]() ![]() 東天狗岳からは、槍ケ岳や穂高も見えた。間近の蓼科山もガスが切れ、全容を現した。時々ガスが出て、西天狗方面に見事なブロッケン現象が出て、二重の輪となり、虹の色も濃い。何回も繰り返し、山頂の人たちが歓声をあげる。折角なので、西天狗を目指す。片道10分強だが、急ではある。しかし眺めはまた違い、ガスが切れ、赤岳や阿弥陀岳、そして南アルプスも見える。さぼらずに西もピストンしたのが正解だ。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() すぐに鎖場となり、下ると、KN君がトウヤクリンドウ、シャジン、イブキジャュコウソウ、ウメバチソウなど名残の花を見つけてくれた。特にトウヤクリンドウを見るのは久しぶりで、清楚な色合いがなつかしかった。夏沢峠の分岐を過ぎると、本沢温泉の道は予想と違って、道幅の狭い、歩く人が少ない登山道であった。本沢温泉までに出会ったのは、小4の女の子二人を連れたお父さんだけであった。 思ったより時間がかかって下り立った本沢温泉は立派な建物で、歩いて10分という露天風呂にも入りたかったが、帰りの渋滞がいやなので、がまんした。少しくだったとろに、テント場があり、雰囲気は素晴らしいが、水は要煮沸、有料トイレも少し離れている。 林道を下ると、すぐに「くりん草園」があった。是非、見たいものだと思った。林道を歩き、左に入るという「みどり池」分岐が思ったより遠いので、地図を広げていると、登ってくる人がいて、聞くと、すぐのところだった。分岐からは、標高差100m近く上るので、温泉に入らずよかったという感じだ。 上りきると以後は、素晴らしい樹林帯が続く。中山峠に近づくと、木道のあるくりん草の大群落があり、是非とも再訪をと思った。 テントを片付け、汚れているので、ゴミ袋に詰め込み、下山する。何と台風で付け替えられた道に入り、すぐに愛らしい「ヤマネ」に出会う。カメラを片付けていて、撮れなかったのは残念至極だが、すぐ近くまで、餌でももらえると思 ![]() ![]() KN君と帰路、林道と登山道とどちらが早いか比べてみると、やはりショートカットする登山道の方が50秒ぐらいずつ早かった。 駐車場に着くと長野ナンバーのセダンが来て夫人から、槍ヶ岳で前日落雷死があったことを知る。妻は心配しているだろうなと電話すると案の定、心配していたようだ。 帰りの高速は、事故渋滞で小仏トンネル渋滞にかかってしまったが、1時間遅れで済んだ。KN君が湾岸線を走ってくれ、レインボーブリッジなどの景観も楽しめ、最後まで、見所の多い山行となった。 |